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美術・写真

八王子とムットーニ ~束縛と自由の距離~

八王子夢美術館は、小規模ながら、なかなか面白い展示をしていて侮れない。いわゆる美術館としての正統派的な展示からわずかにずれた、ユニークな展示が企画される機会が多いのである。

今やっているのは「ムットーニワールド」。作家名がムットーニというので外国人かと思ったが、実は日本人で、武藤雅彦さんという名前のお方。作品は、西洋風からくり人形のような、自動上演式人形装置群。きらきらとひかるミラーボールや、豆球の輝く摩天楼の前で、あるいは教会のパイプオルガンの前で、機械仕掛けの人形が、上下・左右にチクタクと、緻密に、そして繊細に動きまわる。人形や背景のひとつひとつの動きは物語性を持ち、ある結末へ向けて稠密に展開されていくので、ひとたびその動きを見始めてしまったら、目をそらすことはできない。

40あまりあった作品のなかで、最も良かったのは「ザ ダイアリー オブ ウィングス」。等距離に分散して置かれた人形たちは、みんな灰色い顔をして、すっかり各々の内的世界に閉塞しているかのようだ。だが、真っ赤に塗られたひとつのオブジェクト(それが何であるかは、ここでは言わない)の浮上を合図に、人形たちは同時多発的に、まるで天使のように、上昇をはじめるのである。離れられなかったはずの地面から離れることで、人形たちは、束縛と自由の間にある微妙な境界をまたぐ。

「人形がただ1回転するだけで、物語が成立するかもしれない…」とは、今回の展示のビラに書かれた言葉だったが、だとすればこの「ザ ダイアリー オブ ウィングス」は、複数の人物の[時間-物語]を、丹念に追いかけるようにして撮られた、良質なショートムービーのようである。束縛から自由へ、束縛から自由へ。スイッチを切り替えたくなったときに、何度でも見たくなる感じのする作品。人形で、こういうことができるのか!と驚かされた。

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