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喫茶店の系譜がわかる『琥珀色の記憶』

2008-03-13今日は、『琥珀色の記憶』という本についてちょっと書いてみたいと思う。神保町の古本屋で投げ売りされていたのを偶然買ってみたという感じなので、正直あまり期待していなかったのだが、読んでみると、一挙に手放したくない本になってしまった。

昭和30年代の新宿、喫茶店が最もはやった時期のエピソードが詰まった一冊。名前すら知らなかった『喫茶青蛾』、名前しか知らなかった『風月堂』を筆頭に、名曲喫茶、ジャズ喫茶、果ては歌声喫茶に民芸喫茶まで、当時の様子や店ごとの傾向、その後の変遷などが店の名前とともに細やかに記述されている。

今やとんかつ茶漬けの店として有名な、歌舞伎町の「すずや」が、元はといえば民芸喫茶で、今でも開店当時ままの松本民芸家具を使っている話とか、吉祥寺にある「武蔵野文庫」が、かつて早稲田にあった喫茶店「早稲田文庫」が移転したものであるという話とか、詳しい年老者に聞かないと知り得ないような情報が盛り込まれている点に好感が持てる。

特に興味深かったのは、「カフェ」と「喫茶店」という名称の使い分けの話だ。大正時代、東京にはすでに、コーヒーを中心に飲み物や軽食を出す店と、女給が洋食や洋酒を出す店があり、どちらもカフェと呼ばれていたという。ところが関東大震災の後ころから、前者を「喫茶店」、後者を「カフェ」と呼び分けるようになったというのだ。

「カフェ」というと、スターバックスの広がりと共に、ここ数年で定着した浮ついた呼び方…といったイメージを勝手に抱いていたが、実は「カフェ」という呼び方の方が、「喫茶店」という呼び方よりもよっぽど昔からあったのである(カフェという言葉が意味する店の形態は大きく変わったけれども)。この本のおかげで、これからは「カフェ」と呼ぶときのあのためらいをあまり感じずに済みそうだ。

そういえば、巻末についている昭和32年頃の「新宿駅周辺喫茶店地図」も、かなり嬉しい。

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