見開きいっぱいに描かれた“遠山さくら”(注:右カバー図版
のキャラクター)のみずみずしい表情や、太い書体、大きな文字、躍動感溢れる文字組で入れられた絶叫系のセリフなど、ページをめくった瞬間に思わずひきつけられてしまう演出が、大事な場面で効果的に使われており、読んでいて気持ちの良い漫画だ。
なかでも、1巻で“さくら”が発する言葉は、強烈に印象的だ。体育倉庫で、幼なじみのススムにキスをした直後、“さくら”は次のように語る。
「だからあたしは、三人で一緒にいた、あの頃のあたしのままに、
自分の行動をぜんぶ、自分の意志だけで選ぶんだ……」「あたしは恋愛なんかしない。そんな不自由なものに意志とか思考を支配されない。恋愛抜きで平気でキスもセックスも、結婚だってしてみせる。明晰なあたしのまま。」
かつて姿を消したススムの弟を、自分が死に至らしめたのかもしれないという耐え難き記憶を忘却するため、“さくら”は自分のなかの、ある大切な部分を切り捨ててしまった。
強 そうでいて実はとてつもなくもろい、アンバランスな意志を拠り所にして自らの行動を規定する“さくら”。彼女から発せられたこの言葉は、ひどく屈折したも のではあるが、巷にあふれかえる恋愛至上主義に、決して屈服しないと宣言するそのストレートな態度は、猛烈に心地がいい。
そんな“さくら”だが、2巻ではススムのことが気になりだした自分に気づく。頬を赤らめて恥ずかしそうな顔をする“さくら”の表情は、初々しい。



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