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夢の日記

非常階段200603

学校?らしき建物の6Fの廊下を歩いている。建物は古ぼけていて壁は黒く、天井には蛍光灯がない。ところどろころにしかない窓の外側には鉄骨が張り巡らされていて、著しく暗い。けれども窓からはかすかに白い光が漏れてくるので、今は多分夜じゃないんだろう。
私はどうやらここの生徒のようなのだが、確信が持てない。けれども教室に置いておいたはずの荷物がすべてなくなっていて、すっかり途方に暮れていた記憶はある。何時間前かの出来事だったと思う。
途方に暮れていた私は、廊下の端にある鉄製の重い扉をあけ、非常階段へ向かう。ひび割れたコンクリートとさびついた鉄柵でできた非常階段。ここは、何もかもがさびついて、汚れている場所だ。
しかし非常階段には、すでに学生服姿の男が一人座っていた。同じクラスの奴だったろうか、それとも違ったろうか――それすら思い出せないのだが、少なくとも、あまり親しくない男であることは確かだった。
そんなわけで私は、半分乗り出してしまった体の行き場に困っていた。ひんやりと冷たいドアノブから手を離そうとしたもののためらいを感じ、けれどもいつまでも中途半端な姿勢で進もうか戻ろうか悩んでいては、バツが悪い。
「この扉を閉めたら、外からは開けられないのかな」
無理矢理に話題をつくって話しかけてみるが、つまらないことを聞いてしまったと後悔する。だが、もう取り返しはつかない。
「大丈夫じゃねぇ?」
と男はぼおっとした目つきでどこかを眺めたまま、ぼそっと答えるのだった。

確かに男が言うように、たとえこの非常ドアが外からは開けられないとしても、1Fまで降りていけばいいだけの話であるから、さしたる問題はない。どうして私はいつもこんなふうに、ささいなことを気にしてしまうのだろう。
もう、そんなささいなことを気にしているほど余裕はないのだ。あの夜が過ぎて以降、世界はすっかり変わってしまったのだから…。

ところであの夜に何があったのか、判然としない。暗い大きな部屋でパーティーのようなものをしていて――けれどそれが何のパーティーかはわからない――そこから戻ってきたら、いつのまにか教室のすべてものがきれいさっぱりなくなっていた。
しかしそれ以上のことを思い出そうとしても、身に覚えのない光景が思い出されるばかりだ。いつなのかどこなのか判然とせず、何をしているのかもわからないが、少なくとも私は歩き回っているという、ひどく頼りにならない記憶ばかりだ。

ひとつ目は濃紺の空のもとロンドンの川岸にいる光景だ。私はなにかとても変な形をしたロボットのようなものに行動を監視されている。何かの緊急事態なのだ ろうかと考えるが、川にはいつものように水上バスが走り、川沿いの道を赤い二階建てバスや銀色のセダンが走り抜けていく。私はその道を渡りかけるのだが、 そこからさきの記憶がない。
ふたつ目は長いスロープを地下に降りていく光景である。幅員7.5メートルくらいのゆるやかな地下道を下っていく と、大きな地下空洞に出る。体育館ほどの広さがああるその空洞にはお寺が建っていて、セーターを着たたくさんのおばさんがうろうろしている。参拝というよ りも、観光で来る人が多い寺らしく、空洞の奥には茶店があるようだが、そっちの方へ向かおうとした直後から記憶がない。

ひとつの夢の記憶が別の夢の記憶を導き出す。夢の記憶同士が脳細胞内で密接に連携しているのだろうか。サツマイモの根のように…そう考えたところで目がさめるはずだったのだが、次に私が立っていたのは、薄暗い繁華街だった。

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