書籍『滝山コミューン1974』
これから時折、団地を考えるための書籍やWebをピックアップしていきたと思う。今回は、書籍『滝山コミューン1974』原武史(講談社、2007)。
この本の舞台は、1974年の滝山団地。その団地的社会の最も華々しくにぎやかであった時代の生活と教育を、当時少年であった作者の回想と政治学者的な視座により再考しようとする、社会史的エッセイである。
最も多くのページがさかれているのは、作者が通った公立小学校についての記述である。生徒のほとんどが団地に住むその小学校は、団地住民という先進的な保護者たちの積極的なPTA活動と、全生研という教員組織に参加する教員たちの積極的な教育実践の舞台となっていた。
驚くべきは、班活動や合唱コンクールという、現在どこの小学校でも当たり前に行われている仕組みが、全生研という教員組織の積極的な教育実践の主題として、彼らと、彼らの指導により生まれた積極的にリーダーシップをとらんとする生徒たちにより展開されていたというエピソードである。
もちろんそうした彼らの考えによる展開のしかたが、現在もなお、学校教育の場に色濃く影響を残しているかどうについては、定かではない。しかし、かつて私自身も体験し、“あたりまえのもの”と思っていた教育的仕組みが、このような政治的背景を持っていたと知らされた感じは新鮮だった。
かつて高倍率の抽選によってしか入居できなかった、夢の街としての団地で、どんなことが起こっていたのか。その一端を鮮やかに伺い知ることができる、スリリングな一冊だ。
